介男話 その16 偏見

 ステーキの事ビフテキって言う人もはやゼロ。と言う事で介護職(男性)が日々

感じた事を話す略して介男話です。

 長年特養で介護職をしていると、どの様な症状があって、どの様なリスクが考えられるのか、

と言う事がその人の人間性よりも先に把握しようとしてしまう時があります、、。

 今から約18年前の入職して間もない頃、僕はバス通勤していた。

 バスのやや後ろの方の2人がけの椅子に1人で座っていたら、明らかにダウン症だろうなって子がすごい勢いで、僕の横の空席めがけて走ってきた。

 おそらく園の手前にある支援学校の生徒だろう。「ウワー」なんて大声を出しながら

走ってくるし、僕の横に座って大声出されたりしたら嫌だな・・・。なんて正直思った。

 その子は僕の横の空席にスゴイ勢いで持っていたリュックを置くとバスの入り口の方に向かって、

「おばちゃん、ココ!!空いているよ、座って!!」と叫ぶと、足の悪そうなおばあちゃんがバスに乗ってきた。

すいません とか言いながらそのおばあちゃんはバスの中をゆっくり歩き、僕の横に座ると、その子に向かって

「ありがとうね」と言ってほほえんだ。 どうやらその子とおばあちゃんは他人らしい。

 その子は何事もなかったかのように手すりにつかまり、乗車中、時折独り言を言ったりしていた、、。 

 その子は、バス停で待つ間、足の悪そうなおばあちゃんを見て、絶対に座らせてあげようって考えたのだろう。

 そんな心の優しい子なのに、僕は明らかにダウン症だと言う事で偏見を持った自分が情けなく感じた・・・。

 僕は極力、利用者本人を見ようと心掛けている。偏見を持つ事は愚かな事だ。

 この間、認知症の重度な方の申し送りを聞きながら、あの日の事を思いだしていた、、。

 (偏見のない立派な人が過去にいたからこそ、僕たちはカニやアワビを

美味しく食べているのだろう。)