目標

介護職(男性)が日々感じた事を話す、略して「介男話」です。

今回も委員会で配布したコラムを掲載します。

2~3年前のコラムですが、ひまつぶしにどうぞ♡

委 員 会 が 始 ま る ま で の 暇 つ ぶ し コ ラ ム

      『 目 標 』

 先日、支援学校の生徒3名を職場体験として受け入れた。

以前にも書いたが、僕は『障害児』という言葉がキライだ。

どんな能力と形態をしているか、だけの問題であり、

それは「僕の足は2本だがタコは8本ある」というのと同じレベルだと思うし、

どの様に自分の有している物で生活するかという事に対して、

本人が不自由を感じる事があっても周りがそれを障害と決める必要はないからだ。

(不自由を感じていないケースもあるし)

乙武さんは「五体不満足」だが、

顔と口で女性との一線を車椅子で超えた訳ですし。

(不倫はイカンよ)

先生との事前打ち合わせの時、足に特徴があり、

長時間の立ち作業がしんどく、学校では自分から申し出るように

指導している子がいると申し送りがあった。

ロッカーにイスを置く。

休憩場所を確保する等の配慮は行うが、

こちらから気遣う声かけはせず、本人の判断に任せるという事にした。

職場体験初日、オリエンテーションで3人全員に

「介護職は記録に挑戦するアスリートではない。

例えば身体の大きい利用者を“今日は頑張って1人でやってみよう”ではなく、

同僚に“ケガをさせてしまう不安があるので手伝って下さい”と言って2人で行い、

安心と安全を提供するのが仕事です。

無理、不安、知らない、出来ない等を1人で抱え込むのではなく、

チームで支え合って仕事をしています」と伝えた。

その、足に特徴のある子(以下ポンちゃん(仮称))は、

初日に「座らせて下さい」とは言わなかった。

昼過ぎから表情が暗く見えたが、他の子と同じ様に行動をした。

帰り際一言「よく頑張ったね」と声を掛けたら、

ポンちゃんは嬉しそうな恥ずかしそうな、思春期丸出しの表情をした。

2日目は一度「座らせて下さい」と棟の職員に伝えてきた。

座っているポンちゃんに会いに行くと、少し悔しそうな

色々な負の感情の混じった表情をしていたから、

自分から想いを発信した事を褒めたら、

ポンちゃんはやっぱり思春期全開の表情をした。

3日目(最終日)は体調が悪かったのか、

座るだけでなく、横になる事もあった。

連絡を受けポンちゃんの所へ行くと、必死に平気な素振りをしながら

小さな声で「すいません」と言ってきた。

僕はポンちゃんを笑わそうと、

とおっておきのギャグを2~3個織り交ぜながら話をしていたら、

「◯◯という病気で△△という障害があり、◎◎や××が出来ない」と

自分のマイナス面を、感情を出さない様に、

そんなに悩んでいる訳ではないという体で話してきた。

絶対に悩み苦しんでいるのに、だ。

ポンちゃんだけじゃない、

もう1人の子は小学校の頃いじめられていたと話していたし、

もう1人の子は兄弟と自分は違うと話していた。

支援学校の生徒達は、将来「何がしたいか」ではなく

「何が出来るか」でもがいていて、

「自分が出来る事」と「マイナス面を超える武器」を作り

社会人になる事を目標にしていて、学校も保護者もその事をフォローしていた。

例えば3人共、礼儀作法が徹底されていて、誰もいない部屋に入る時でも

「失礼します」と言って頭を下げ、話しかける時は

必ず「すいません、今よろしいですか」と枕言葉をつける。

生徒達にとって社会人である僕達は彼らの目標であり、

僕達を通して社会を見に来ているのだ。

ポンちゃんには職場体験の初めと終わりの挨拶をするという役割があった。

初めの挨拶の時、僕と園長に対してポケットからメモを取り出し

ガチガチに緊張しながらメモに書いてある挨拶を小さな声で「音読」した。

16歳の少女にとって、人前で話す事はもとより、

初めて会うおっさん2人で(園長スイマセン)しかも施設長と管理職だ。

とてつもない重圧だっただろう。

3日間の体験が終わり、挨拶の為園長室に向かう道中で

「またポンちゃんが挨拶するの?」と聞くと、

3日間出しっぱなしだったメロンパンみたいにカチカチの顔で

「はい」と返事をしてきた。

「初日の挨拶カチカチやったもんね、3日間高齢者と接してきたでしょ、

園長も同じ様なモンだよ」と言って園長室のドアをノックした。

ポンちゃんは初日と同じ様に震える手でメモを取り出し挨拶を始めた。

一見すると初日と同じ様に緊張してカチカチの少女が

挨拶の書かれているメモを読んでいるのだが、僕は見た。

ポンちゃんは3回視線をメモから離し、園長へ向けていた。

それは「音読」ではなく「挨拶」だった。

すごく小さな事だが僕にはとてつもない成長を感じ、

うっかり泣きそうになった。

生徒達はあと2年学校で社会人になる事を目標に努力を続け、

すさまじい成長をするのだろう。

それぞれが有している能力と形態で生きていく為に…

僕の形態は2年後、ほうれい線とウエストが増えるだけなのに…

せめて彼らの様に目標を立て、そこに向かって成長しなくちゃ…

なんてクサい事書いていたら今回のコラムにオチがない事に気が付いた。

まぁそんな回があってもいっか。

今回は彼らの追体験に付いた意見だ。

                    おしまい

                  (You can do it!!)